「CCRC」という用語を大学院の関教授から教わったことが、南伊豆町に移住しようと思ったきっかけです。CCRCとは「Continuing Care Retirement Community」の略称で、発祥地のアメリカでは、「医療や介護が必要になってもケアを受けながら生涯に渡って住み続けることができる場所」と定義されています。日本版CCRCは、移住促進とセットで政府が進めた政策で、「都会の高齢者が地方に移り住み、その地で新しいコミュニティを形成し、健康状態に応じて継続的なケアを受けながら自立した社会生活を送る」という構想でした。2016年4月、改正地域再生法において「生涯活躍のまち(日本版CCRC)」の推進が制度化されました。日本版CCRCは、政策として取り組まれた点で、主に民間企業が行う事業であるアメリカのCCRCと異なっていました。この政策によって、人口減少・少子高齢化及び東京一極集中という日本が抱える大きな課題を、一気に解決することが期待されました。
私は、以前から移住ということに興味がありましたが、どうせならシニアも優しく受け入れてくれる自治体がいいなぁと思ってこの話に興味を持ちました。そして積極的に政策に取り組んでいるいくつかの自治体で移住体験をし、その中の一つが南伊豆町でした。では南伊豆町にはシニアを優遇する制度が、他の自治体と比べて充実しているかというと、私の知った限りでは特には無さそうですが、南伊豆のシニアの皆さんはとてもお元気です。何か秘密があるかもしれません。余談ですが、南伊豆町は、もともと、老若男女問わず移住者を受け入れる体制が充実しています。お試しが短期、中期、長期とあり、ゆっくりと考えることができるシステムになっています。移住者に対して町の人はとても優しいのです。南伊豆町の移住促進施策についてはまた体験者として発信したいと思います。なぜ南伊豆?と聞かれることも多いのですが、いろいろ勉強した割には、私は最後は直感でここに住んでみたいと思い決めました。そして住んでみて、私の直感は正しかったと日々感じています。そう感じた出来事を紹介することができたらと思い、このブログをはじめました。
ところで、日本版CCRCについては、過去形で書いているように、この政策はあまりうまくはいっていません。一番の理由は、シニアに特化した移住を歓迎する自治体が少なかったことです。シニア側にも、今の生活を捨てて新しい環境になじめるのかといった不安は当然あります。年齢が上がればリスクを避けたいと思う気持ちは一般的に大きくなるでしょう。「生涯活躍のまち」は「全員活躍のまち」に変わり、全世代を対象にした政策に変わりました。しかしどの世代にとっても、移住したいと思っても実行することは難しく、成果を上げるには時間がかかると考えられていました。しかし、「関係人口」や「二地域居住」といった言葉が一般的になるなど、移住の認識も変わりつつあります。各自治体が用意してくれている充実した移住体験制度を利用したり、セミナーで体験者の話を聞くといった支援体制が整ってきています。そのような中、コロナ禍によって働き方が変わり、移住を真剣に考える人が増えているようです。