横浜国立大学大学院で、関ふ佐子教授の下で日本の社会保障について学び、この度博士課程前期を終了しました。就職のためでもなく、専門的な資格を取得するためでもなく、ただ学びたい気持ちだけで過ごしたとても贅沢な時間でした。人生百年時代とすると、私は丁度真ん中を少し過ぎたところです。ここで学んだことを、これからの後半人生の大きな糧にしていきたいと思います。若い学生の皆さんや社会人学生の皆さんにも大変お世話になりました。オンライン授業で大変な1年でしたが、できないと嘆くより、工夫してできることを広げていくことを学んだ1年でもありました。そして、好き勝手を許してくれた家族にはとても感謝しています。これから少しずつ感謝を形に変えていきたいと思います。
私が関心を持って取り組んだことは、日本のコミュニティ社会についての研究です。個人のプライバシーを尊重することと、地域コミュニティによる助け合いは両立できないか、ということが問題関心でした。困った時、人は、立ち入ってほしくないという気持ちと助けてほしいという気持ちが半々に行ったり来たりすると思います。誰もがいつでも気軽にふらっと立ち寄れる「居場所」があれば、漠然とした思いを抱えた人が集まり、問題解決の糸口が見つかることもあるのではと思い、修論のテーマを「居場所作り」に決めました。
超高齢社会である日本では、社会保障の分野においても様々な問題が生じていることは周知の事実です。政府は、課題解決のために、自助を基本としながら互助・共助・公助の順で取組むことを提言しています。医療・介護に従事する専門職従事者は専門の仕事に注力し、介護予防・生活支援といった分野は自治会、ボランティア、NPO等の一般の住民も主体となって助け合い活動を行う事が求められることとなりました。元気な高齢者が互助の担い手となることは担い手不足の解消と共に高齢者自身の介護予防につながると推奨されています。政策と言われると反発したい気持ちにもなりますが、自分でできることは自分でして、隣近所で助け合うということは合理的です。そんな当たり前のことが、首都圏では難しいというところに私の研究の意義があったわけなのです。